→4・藤こき(フジコキ) → 5・のしいれ(ノシイレ) → 6・藤績み(フジウミ)
→7・撚り掛け(ヨリカケ)→ 8・枠取り(ワクドリ) → 9・整経(セイケイ、ヘバタ)
→10・機織り(ハタオリ)
@藤布に使用するフジは、つるが右巻きのノダフジ(図1−1)がよい。
左巻きのヤマフジ(図1−2)や、ツタカズラなどと間違わないように注意が必要
春から秋までは、葉の形で見分けることもできる。
A最も良い繊維がとれるのは、樹齢5,6年で真直ぐに伸び、表皮が赤みを帯
びた直径2センチから3センチ程度(親指大)の横にすじがはいっているもの
で、なるべく木に巻きついていないものがよい。太くて古いものは、繊維が
網状にからまり、力を要して剥ぎにくく、伐るだけ無駄とは言えない
頑張って剥げば、たくさんの繊維が得られる。
B藤伐りの好季は、5月頃から7月上旬くらいまで。理由は、つるが最も多く
水分を吸い上げて、皮が剥ぎやすいため。秋以降はうまく剥がれない。
C着物を一反織るのに1ヒロ(約1・5メートル)の長さで70本必要。
慣れるまでは、ロスを見込んで100本位あったほうがよい。
道具・・・厚刀のカマまたはナタ、のこぎり、高枝切りなど
服装・・・帽子、長袖、長ズボン、軍手、長靴など
(注意事項)
(1)山の仕事は危険をともなうので、十分注意して行動する。
一人では行動しない。高い木に登らない。前の人と少し離れて歩く。
周囲の安全を確かめて作業をする。声を掛け合う。
(2)根元から伐る場合は、数年後のことを考えて20−30センチ残す。
(3)伐ったつるは、元(根元)の方にナタ目を入れ、輪にして運び出す。
@切ってきた藤を、すぐに根元のほうから木槌でたたいて、木と皮を分離させ、
根元から先端に向かって皮を剥がす。すぐに出来ない場合は、1週間位なら
水に浸しておいても構わない。剥がした皮は、目印に元をくくっておくこと。
注意;作業は常に根元から行う。根元を頭(アタマ)といって、どの作業のときも
確認しながらすすめる。
A皮は、鬼皮(おにがわ)と中皮(なかがわ)に分かれ、鬼皮はカマで削って除き
(このとき最初「頭」の方約2cm削ってから、必ず頭から先に向かって鬼皮を削って行く)
、中皮を繊維として使用する。中皮は、灰汁炊きの時f炊きやすいように1−1・5
センチ幅に裂き、握って一握りの束(5本分)にする。これを一ツという。
長さの揃ったものを合わせると扱い易い。図2−1のように元をくくっておく。
B竹竿にかけて乾燥させる。この時期は樹液が多く含まれているので、
カビの発生に十分注意し、風通しの良い日陰で十分乾くまで干す。
C乾燥したら、図2−2のように直径40センチ位の輪にしてくくり、屋根裏など
(日光の当たらない乾燥した場所)で保管する。鬼皮や木は、灰汁炊きのとき
燃料に使用するので、まとめておく。
道具・・・槌、カマ、ナタ、鋸、竹竿、ムシロ
(注意事項)
(1)元の目印(ナタ目)をしっかり確認する。最初のミスは後々まで響く。
(2)鬼皮は部厚いので、中皮は出来るだけ薄くなるように削ぐ。
(灰汁炊きが容易で藤コキが楽になる)
@最初に、大鍋に6分目位の湯を沸かしておく。大鍋は鋳物製がよい。
Aタライにぬるめの湯をとり、乾燥した中皮を輪のまま浸して軟らかくする。
(ためさんは前日から浸す)
注意:中皮一ツの中ほどをゆるくしばる。
Bこれを別のタライに入れ、木灰を十分にまんべんなくまぶす。
(灰は十分乾燥したものを使う)
注意:頭をしばった所をゆるめて特に入念にまぶす。
C大鍋に少し水を差し、木灰を一升ほど入れよくかき混ぜる。
木灰をまぶした中皮を輪のまま浸す。頭を、交互に上下して高さを一定にする。
残った灰もすべて脇から入れる。このとき、中皮をひっくり返しやすいように、
皮をむいた藤のツルを半円形にして入れておく。
D上から木のふたなどをして、沸騰させて2時間炊き、ひっくり返して更に2時間炊く、
沸騰し始めた時間を床に記しておく。ひっくり返し方は、半円形にしたツルの片方を
持ち上げ、もう一方を押さえ込むようにする。
道具・・・大鍋、タライ,杓、バケツ、五徳、火バシ、ジュウノ、消壷、ゴム手袋
材料・・・薪(よく乾燥させたものを用いる)
木灰(藤一ツに対し木灰一升)
「上世屋ではひしゃく一杯が5合で、藤一シバ(5束)に対し
木灰一升を当て、消石灰は約1割を使用」
灰の準備:灰は振るってあらかじめ炊き返し、十分に水分を飛ばし
サラサラにしておく(あら灰はほぼ半量になるので十分用意する)
消石灰(少ないほどよいが一カマに対し5合ー1升位まで)
(注意事項)
(1)2時間炊く間にも、時々位置を変えて熱の当たり方を平均にする。
(2)湯が少なくなったら、差し湯をする。
(3)4時間近くなったら、指を入れて炊き上がり状態をみる(煮汁は赤茶色)
中皮をつまんでみて、軟らかくヌルッとし、ねじってみてねじりが戻らなければ
炊けている。灰汁炊き後、大鍋はきれいに洗い火にかけて水分をとる。
**(一束を5本より3本にしたほうが、良く炊けるのでお奨めします!)
**(藤は大鍋の中に収まる数で良い!)
@中皮が炊き上がったら、火ばしなどではさんでバケツに移す。
Aこれをすぐに川の冷水の流れの中で、灰と灰汁をすすいで落とす。
B一ツをほどき、藤1−2本分を右の親指と人差指ではさんだコウバシでしごいて
不純物を洗い流す。5回程度しごいたのち、左手に巻きつけながら順次しごいていく。
藤コキの時、頭のくくりを一時ほどくので頭を見失わぬよう十分注意。
(現実には一度に藤5本分の藤コキをしているが、その時頭の位置を揃えること)
C白くなった藤の繊維を一ツ分(5本)集め、図2−1と同じようにくくり固く絞る。
道具・・・コウバシ(材料は直径1・5センチ位の篠竹・竹の皮)、バケツ、長靴、タオル
練習用のひも、ハシゴ(川底が深いとき)
(注意事項)
(1)炊き上がりは、湯が沸騰しているので、取り扱いには十分注意すること。
(2)しごいても取れない不純物は、手でつまんで取り除く。
(3)藤こきの良し悪しが、その後の糸の品質を左右するので、ていねいに
白くなるまで行う。
(4)良い繊維まで流さないように。途中でダンゴになったら繊維を乱さぬよう
ていねいにしごく。
@藤こきの終わった繊維は、たぐって輪にしてしっかり持ち、米ヌカを溶かした
温湯(約40度)に数分間浸して米ヌカ油を十分含ませる。(このとき、米ヌカを布袋に入れてやれば
あとでヌカが散らばったりしない)。目的は、柔らかさを与えすべりを良くするため。
米ヌカの分量は、温湯が大鍋6分目(約20リットル)に対し、一升(1.8リットル)くらい。
A両手でしっかり繊維をしばり、輪のままはたき、米ヌカを落とす。これを真直ぐに伸ばし、竹竿にかけて
陰干しをする。
道具:大鍋、一升マスまたは計量カップ、竹竿
材料:米ヌカ
(注意事項)
(1)干すときはくくりを解くが、元(アタマ)を間違えないように一定方向に干す。
(2)よく乾いたら、一握り分をまとめて頭をしばり、8の字にして最後をくくっておく。
@乾いた藤の繊維を、元から先に向かってコウバシでしごく。
A繊維の束の先か中央を、足の親指と人差し指ではさみ、所定の糸の太さとなる
ように繊維を裂く。このとき、ひざの上に黒い布をかけると見やすい。
B藤績みの手順(基本)は次のとおり。
1.2本の繊維の端をそれぞれ2つに裂く。
2.これを合わせてそれぞれ左撚り(左の親指と人差し指で押さえ、右の親指と人差し指で手前に撚る)をかける。
3.そのままの状態で右寄りをかける(反対に撚る)。
C績んだ糸は張子籠(オンケ)の中に輪にして静かに重ねていく。
このとき、最初の糸の頭を、輪にして籠の外に垂らしておく。
道具:コウバシ、黒い布、張子籠または洗面器
(注意事項)
(1)糸の用途により、太さをできるだけ均一にし、節やヒゲをなるべく作らないこと。
糸の太さは、見本をよく見て裂いていく。
(2)績んだ糸は、次の撚り掛けまで直接手でさわらないこと。
(3)糸を口でくわえたり、指を濡らしたりして糸を濡らすと
撚りが掛かりやすい。
@績んだ糸はぬるま湯(体温程度)に浸して柔らかくしたのち、湯を捨てる。
押さえてしっかりしぼる。
A糸車を準備し、下にビニールシートなどを敷く。
Bツムにツメヌキ(茅の茎)の管を、適当な長さに切って差し込む
Cこれに糸の端を巻きつけ(この時、手で糸に撚りを掛けておく)、
右手で糸車を右回転させながら、左手でツムの先端の糸を持ち、
左後方いっぱいまで左手を移動する(約60−70cm)。この間に糸には右撚りがかかる。
(糸車からツムに回転を伝えるひもは、交差して掛けてあるので、
糸車を右に回すとツムは左に回り、糸には右撚りがかかる。)
・経糸用は、糸車を5回まわす。
・ヌキ糸用は、4回まわす。
D撚られた糸が左後方までいったら、ツムの真上まで糸を引き上げ、
糸車を左へ少し回した後、再び右へ回して撚られた糸をツムに巻き取る。
以下、CとDを繰り返し撚っていく。
道具:糸車、糸切りハサミ
材料:茅(カヤ:ススキの別名)の茎
注意事項
(1)糸車の回転方向を間違えると、績んだところが抜けるので要注意。
(2)撚り掛けの中に見つけたヒゲは、ハサミで丹念に取り除くこと。
@ツムに巻き取られた糸は管ごと抜いて、使用しなくなったツムに差し込む。
Aこれを左手に持ち、枠取り台(世屋ではカエグリという)に差し込んだ糸枠を
右手で回しながら糸枠に巻き取っていく。
道具:糸枠、枠取り台、古いツム
注意事項
(1)糸はゆっくりと綾振りをさせ、糸枠にしっかりと巻き取ること。
(2)たて糸用は12個の糸枠を作り、十分に乾燥させてから整経を行う。
@整経台(ヘダイ)と竹竿、静輪(マギリ)を準備する。
A糸を巻いた糸枠12個を、前後に6個づつ2列に並べる(千鳥におく)。
Bそれぞれの糸枠から糸端を引き出し、竹竿にくくられたマギリという輪に
1本づつ通す。
C12本の糸端を揃えて一束に結び、キリワケズミのひもにくくる。
D12本の糸を右手の親指と人差し指で小アゼ(コマコアゼ)を取り、
小アゼ用のクイにかける。
E整経台の両端のクイに、所定の長さとなるよう糸束を順次かけていき、
最後の2本のクイに大アゼ(アラアゼ)を取る。
FDーEを所定の回数分繰り返す。
整経の規格
1・座布団 経糸本数 12本x33回=396本、整経長2丈8尺(10.6m)
2・着物 ” 12本x25回=300本、 ” 2丈6尺(9.6m)
G整経がすんだら、小アゼと大アゼのアゼヒモを通し、糸束の数ヶ所をひもでしっかりくくる。
Hキリワケズミの所でハサミを入れて糸束を切り、小アゼ側から二重鎖結びで編んでいく。
道具:整経台、静輪(シズワ・マギリ)、ハサミ
(注意事項)
(1)糸枠は必ず偶数にし、マギリの真下にくるようにならべること。
(2)小アゼを取るときは、いつも上下が同じになるように指使いを決める。
指使い:最初に人差し指ですくい、親指を下に向けて次の糸をすくう。
(3)糸束の張り具合が一定となるように。
(1)経巻き
@高機(タカハタ・ハヤハタ)を組み立てる。
A編んだ経糸は大アゼ(アラアゼ)が解け口にきているから、ここにアゼ竹を
通し、大アゼのヒモをほどく。
B高機の千切り(世屋ではチマキといっている)に結びつけた2本のヒモに
竹を1本くくり、糸束を織物の幅よりやや広めになるよう結びつける。
(織物の幅) 座布団 約45cm、着物 約35cm
C紙の機草の代わりに割竹や木の棒をはさみながら、経糸を千切りに巻きこむ。
高機
道具:高機(経糸が長く張れるもの)、アゼ竹5−6本、組立用の工具、ヒモ、ロープ類
(注意事項)
(1)経糸の幅が狭くならないように要注意。
(2)巻き上げたときに経糸がゆるまないように、糸束を引っ張りながら巻く。
竹も多めにはさむ。
(2)綜コウ通し
@開口装置は1本ロクロを使用しているため、綜コウ枠は2枚つるす。
経糸は綜コウの前・後・前・後と交互に通す。
(3)筬通し
着尺の場合、筬密度は15羽/曲寸で、引込み数は2本と1本が1:1の混羽(まぜは)で
経糸数が300本、したがって、経糸密度は7.4本/cm、筬通し幅は40.4cmとなる。
帯の場合は筬密度を18羽/曲寸、経糸数を264本にする。
(4)織付け
@綜コウ・筬に通された経糸は、織前側の糸端を織物の幅になるよう、織付け布に結び付け、
経糸全体の張力をそろえる。
A綜コウと筬の高さを調整し、製織の準備をする。
Bよこ糸は糸車で竹管に巻き、水で濡らして軟らかくし、杼の中におさめる。
(5)糊付け・機織り
@たて糸には毛羽を伏せるため、松葉を束ねたブラシ(シャミボウキ)で糊を付ける。
乾燥はたて糸の下に炭火の入った火鉢を置く。
糊はシャミボウキにタップリと付け、たて糸の上からと下から、織り前から間丁に向かって同じ方向へこすり付ける。
そのあとすぐに、たて糸がくっつかないようにするため、糊の付いていないシャミボウキで同じ方向にこする。
このときヘヤードライヤーを使って乾かすと早い。
A糊材は、玄米と蕎麦1:1を原料としたでんぷん糊で、挽いた粉末を混ぜ合わせて炊き糊化させる。
B準備が整ったら機織りにかかる。よこ糸の密度は平均約5.1本/cm、織り上げの長さは約10.8m。
着尺一反織るのに、伝承者で1日10時間織って3―4日かかる。
よこ糸は、織り口と出来るだけ大きな角度にして打ち込むと引けが防げる。
筬打ちは、口を閉じて一回、次の口で一回打つ。
よこ糸が途中で無くなっても、そこから続けて新しいよこ糸を足して行く。
(6)仕上げ
@規定の長さが織り上がると織機から下ろし、竿にかけて室内で乾燥させる。
A自家用に用いる場合は、糊抜きの後、きぬた打ちをして軟らかくする。
出荷する場合はどちらも行わない。